ビートルズは音楽を超える

私は、以前は本に関しては文芸作品を読むのが好きでしたが、ここ数年は新書にハマっています。
私、いつもファッション誌ばかり読んでいる訳ではないですよ、一応。
内容に関しては、美術に関して書かれた新書をチョイスして読むことが多いかと思います。
美術関係の新書は、どこからかの出版社から、コンスタントに出版されているようです。
でも、ロックに関する新書は皆無に等しいかと思います。
なぜなのでしょう。
もし、ロック・マニアなぞ、新書は読まないだろうと出版社から思われていたら心外です。

でも、唯一例外なのは、ビートルズに関する新書です。
ビートルズに関する新書は、探すと結構あります。
上の写真の、『ビートルズは音楽を超える』も、その一冊です。
私は、今年7月に出版されて、すぐに読みました。

この著書の著者、武藤浩史氏は、慶応義塾大学の英文学の教授です。
言わば、音楽が専門ではなく、英文学研究者から見た視点でのビートルズ論が語られています。
しかも、著者はロック・マニアではなく、無類のクラシック好きということなので、一体どんな文脈でビートルズが語られるのか、ページの最後まで興味をそそられました。

著書の中で、私が興味を惹かれた部分は、階級社会であるイギリスにおいて、ビートルズの中では、ジョンが実はMiddle Class寄りの階級で、ポールとジョージはLower Middle Classで、真のWorking Classはリンゴだけだったらしいです。
なので、ジョンが“Working Class Hero”を歌った時、ポールは笑ったという逸話が書かれています。

ジョンは父親が行方不明になり、母親も自由気ままな生活をしていたため、Middle Classの伯母に育てられるという複雑な家庭環境で育ちました。
伯母の教育が良かったのか、ジョンはそこその進学校に進みましたが、わざとテディーボーイの格好をしてWorking Classの振りをしたそうです。
ポールの両親は上昇志向が強く、父親が営業マンで、母親も看護師で、ポールをリバプールの超エリート進学校に行かせています。
ジョージの父親はバスの運転手でしたが、バスの運転手の中でも組合の役員という比較的高い地位で、ジョージをポールと同じ超エリート進学校に行かせたそうです。
リンゴだけは、Working Classだった上、勉強が苦手だったようで、進学校に行けなかったとのことです。

これから先は、私の私見ですが、ビートルズ4人の生い立ちを見ると、その後の彼らのソングライティングや生き方に影響していると思います。
初期のビートルズのインタビューやライブの映像などを観ると、複雑な家庭環境で育ったジョンはブラックジョークを連発し、ポールは父親譲りの営業マン振りを発揮して、ファンが喜びそうなコメントを連発します。
ジョージは、彼らの中で最年少なので、基本的には他の3人を立ててますが、頭の回転が良く、気の利いたコメントを発します。
リンゴは、そこに居るだけで癒されるような、素朴でユーモラスな仕草で、ムードメーカー役を引き受けています。

その状況は、ライブをやらなくなったビートルズ後期や解散後も続いています。
ジョンとポールは全キャリアを通して、ジョージはビートルズの中期以降でソングライティングで成功します。
リンゴは、勉強が苦手だったのが災いしたのか、ソングライティングは得意ではなかったようです。
でも、リンゴは持ち前の人柄でビートルズ解散直前の気まずい人間関係でも他の3人と友好的人間関係を築き、解散後もジョンやポール、ジョージの3人にソングライティングしてもらったアルバムをリリースしてヒットさせています。
4人の生き様を見ると、人間は年齢を重ねても基本的には変わらないものなのだと感じています。

どなたか今度は、レディオヘッドについての新書を書いてくれる方は居ないかなぁ?