Live In Hyde Park

The Whoは、初期の頃から、ずっとライブにエネルギーを費やしています。
The Whoは、レコーディングのため、スタジオで創造的な作業をしているよりも、ライブで破壊的な爆音でライブをしている方が似合うバンドだと思います。

1982年に解散してからも断続的にライブをしたり、ツアーをしていました。
1999年からは、殆ど続けてツアーを続けているように思います。
1999年頃からのライブは、浪費家のジョン・エントウィッスルの生活を救うという理由でツアーを再開しました。

しかし、そのジョンが2002年に他界してからも、『契約が残っているので』という理由でロジャーのバンドでベースを弾いていたピノ・パラディーノと、ピートの弟のサイモン・タウンゼントをコーラスとリズム・ギターとして加入させて、ツアーを続行させました。
そういえば、キース・ムーンが1978年に他界してからも、『契約が数年先まで残っている』という理由で、元フェイセズのケニー・ジョーンズを新しいドラマーを加えて、1982年まで活動を続行させていた経緯があります。

現在の主たるメンバーは、オリジナルのメンバー、ボーカリストのロジャー・ダルトリー、ギタリスト・ソングライターのピート・タウンゼントの2人に加え、ベースのピノ・パラディーノ、ドラムのザック・スターキー、コーラスとリズム・ギターのサイモン・タウンゼントで構成されています。
2002年から、ずっとこのメンバーで、14年もライブを続けています。
もはや、同世代のローリング・ストーンズよりもタイトなスケジュールでライブを続けていると思います。

オリジナルのメンバーであるロジャー・ダルトリーと、ピート・タウンゼントはライブをしなくても、充分生活は出来ると思います。
名ベース・プレイヤーであるピノ・パラディーノも、The Whoでなくても、すぐにどこかのバンドやレコーディングで声がかかるかと思われます。
では、彼らはなぜここまでライブにこだわるのでしょうか?

まず、The Whoがツアーを続けないと一番困るのは、ピートの弟のサイモン・タウンゼントではないでしょうか?。
サイモンは、ソロ・アーティストとして活動をしていますが、The Whoとして活動していた方が安定していると思われます。
何か、この時点でThe Whoが"家業"のような役割を果たしています。

ザック・スターキーは名ドラマーなので、The Whoがライブ活動をしなくても大丈夫であるし、実際にオアシスと掛け持ちでドラムを叩いていた過去もありました。
しかし、キース・ムーン直伝のドラムは、The Whoで叩くことで本領を発揮します。
ザックがThe Whoの活動に専念するために、オアシスを抜けたことも分かる気がします。

The Whoのライブに加入する前から名ベース・プレイヤーであったピノ・パラディーノも、The Whoに専念しています。
何しろ、年がら年中ライブをしているThe Whoですから…。
やはり、The Whoのライブに、その音楽性にミュージシャンとしての、やりがいを感じているのでしょう。

ピートは昨年、『2015年以降は、もうThe Whoとして活動しない』と言っていましたが、ロジャーが髄膜炎を患って、公演が延期になり、また今年もライブを続けています。
まぁ、ソングライターのピートは、ライブをしなくても裕福な生活を送れるので、そういったコメントをしてしまうのでしょうが、上記の諸事情でライブを続けているのでしょう。
何か、いつも『閉店セール』をしている店の戦略のようにも感じます。
ピートは優秀なソングライターであると同時に、商売上手で、かつ契約を尊守する誠実な経営者にも感じられます。

正直、The Whoは働き者だと思います。
昔から一生懸命、ライブを続けていたThe Who。
ストリーミングで印税収入が減少し、ライブの収益がミュージック・ビジネスの主体になりつつある現在でも、その活動は理想的です。

ビジネス以上に、The Whoの音楽性は素晴らしいものです。
私も2回ほど、The Whoのライブを聴きましたが、その音色は黄金のように光り輝いています。
それは、ライブ盤やDVDでは再現不可能な音のオーラです。
史上最強のライブ・バンドはThe Whoと言っても過言ではないでしょう。
その素晴らしいライブの化学反応によってロジャー・ダルトリー、ピート・タウンゼントだけでなく、ピノ・パラディーノ、ザック・スターキー、サイモン・タウンゼントはミュージシャンとしての喜びを感じているのでしょう。

Live in Hyde Park
Who
Eagle Rock Ent
2015-11-20