The Whoの"トミー ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール"のCDを聴き込み、DVDも観ました。
まずは全体的な感想ですが、ザック・スターキーのドラムが素晴らしいです。
今回は、ベースのピノ・パラディーノがスケジュールの都合で参加出来ず、どこか困惑している感じはありますが、その不安感が今回のライブの味になっていると思います。
ボーカルのロジャーは、近年は黒人ブルース・シンガーのような、野太い黒人風のボーカル・スタイルに変わりましたが、このライブで一層、その傾向を増したように思います。
ギタリストのピートは、細かく繊細なエレクトリック・ギターの演奏に没頭し、ボーカルやコーラスも必要最小限に抑えている印象です。
そして、The Whoの名作ロック・オペラである"Tommy"の演奏は、テンポを落として演奏し、若き日のライブより、疾走感が減じましたが、若干ファンキーな演奏になり、これも有りだと感じました。
ロジャーのボーカルが黒っぽくなった分、ファンキーな演奏との相性は良いと思います。
ビジュアル面では、ロジャーはネイビーのシャツで、ピートはグレーのTシャツ姿で、お世辞にもオシャレとは言い難い姿です。
当然、2人とも年齢も重ねていますので、往年のモッズ・ファッションの華やかな姿とは、かけ離れています。
でも、ドラマーのザック・スターキーは、デニムと赤いアディダスのトラック・ジャケットというスポーツ・ミックスでコーディネイトし、本人のオーラを含めてファッション・リーダーのように感じられました。
ステージ・アクションにおいては、ピートが腕をグルグル回すアクションは、盛り上がった時にする位で、演奏中にジャンプすることは、さすがに一度もありませんでした。
ロジャーがマイクのコードをブン回すアクションも、地味めです。
近年のThe Whoのライブは、ビジュアルやステージ・アクションが地味になった分、CDやヴァイナルやMP3など、音だけで聴いた方が良いように感じました。
それは絵図が、ちょっと…。
映像を観ずにCDで聴くと、本当に年齢を感じさせない若々しい演奏に感じられる所が、現在のThe Whoのマジックを感じさせられます。
しかしながら、何よりザック・スターキーのドラムの演奏が素晴らしいです。
ザックは、ドラムの技術やファッションやオーラは、大スターそのものです。
近年のThe Whoのライブ音源は、ほとんどザックのドラムを聴くことが主眼になっているほどです。
"Tommy"の演奏の最後に、ソングライティングしたピートは、自身の幼少時の虐待をテーマにしたロック・オペラなので、『聴くことも演奏することも辛い』とコメントしているのが、印象的でした。