邦題『リリーの面影』と題されたザ・フーの1967年の曲です。
Pictures Of Lilyは曲調やボーカルの声色は甘い感じですが、バックで流れるバンドの音はヘビーです。
その落差が、この曲の良い所で、凡庸なポップスに陥らずに済んでいます。
歌詞は男の子の自慰行為について歌っており、それもまたこのバンドの特色が出ていると思います。

ザ・フーというバンドは『思春期の少年』を描くことに長けたバンドで男の子達に絶大なる支持を受けていますが、女の子達の人気はサッパリというバンドです。
確かに女の子が、男の子の自慰行為の歌を聴いた所で、共感を得ることはありません。

1967年という年は、ロックやファッションにとって変革の年で、愛と平和を謳ったフラワームーブメントと呼ばれる流行がありました。
その『愛と平和』の時代にその歌詞の内容は異彩を放っています。

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バンドのソングライターであるピート・タウンゼントは、そんな世の中の潮流を分かった上でこの曲をレコーディングしている確信犯です。
曲やサウンドの雰囲気そのものは、フラワームーブメントの影響がみられますが、歌詞で他のバンドと差をつけています。

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この2年後に、ザ・フーはビートルズやローリング・ストーンズをもしのぐような巨大なスタジアム級のバンドに成長していきます。
この曲は後の大成功を予感させるような、ただ者ではオーラが漂う曲であると思います。