私は、THE BEATLESのアルバム“ RUBBER SOUL”(ラバー・ソウル)を聴く時は、ソファーに座って、紅茶を飲みながら聴くのが好きです。実に優雅な気分に浸れます。このアルバムには世間の人が思うビートルズのサウンドと、そうでない音が微妙に混じり合っています。“ RUBBER SOUL”は、何処か地味なイメージだったので、初めは大嫌いでした。でも、自分自身が、年齢を重ねるうちに、じわじわその良さが感じられるようになりました。“Norwegian Wood”や、“Nowhere Man”が中でも好きな曲です。“ラバー・ソウル”は、ビートルズがアイドルからアーティストに変貌を遂げた最初の作品といえます。ジョンの曲は、より観念的になり、ポールは、ベースの腕を上げ“Michelle”のような名曲をどんどん書くようになっていきます。“ラバー・ソウル”から、明らかに二人のベクトルが違う方向に向いていく感じが良く分かります。そして、このアルバムを、一言でどんなアルバムか形容するならば、『書斎映えするアルバム』という事になるでしょう。それだけ、静寂を感じるのです。→続く

静寂を感じるロックというのも不思議な気がしますが、その不思議な事をしている事が、ビートルズの“ラバー・ソウル”の魅力のポイントです。ビートルズは、あの女の子が金切り声を上げるライブを数多くこなしてしたからこそ、“ラバー・ソウル”を作ることが出来たのでしょう。その、観客の女の子の金切り声は、離陸するジェット機の騒音並みの音量だったとの事です。何しろ、レコーディングが終われば、また金切り声の嵐に身をさらす事になるのですから、レコーディングでは静寂を味わいたいという気持ちも分からなくないと思います。現在では、ロックのライブでは、女の子の金切り声はそんなにありませので、『絶叫の女の子』という60年代中頃のロックの乗りが、“ラバー・ソウル”を産み出したのでしょう。