英国のミュージシャン、ポール・ウェラーの言葉で『みんな、楽器を持つと、すぐに楽器を上手く弾けるように練習し始めるけど、自分は、曲を書く事から始めた』と言ってました。この言葉は、芸事の真髄を語っています。テクニック偏重で、楽器が上手いだけなら、スタジオミュージシャン止まりで、永遠にスターになる事が出来ません。陶芸など伝統工芸の世界では、作家と職人の分類がなされていますが、技術が上手いだけなら、職人止まりです。何かを訴えかける作品を制作できるのが作家です。絵画では、私の経験上、上手く描くより、何を訴えるのかが、重要な要素になります。結局、音楽もアートも『言葉なき言語』なのです。どう表現するかではなく、何を訴えかけるかなのです。だから、テクニック偏重は、英会話に例えると、『流暢な英語で下らない内容を喋る人』 と同じになってしまうと思います。カタコトでも、身振り手振りで、面白い内容を話す人の方が、魅力的です。芸術は、言語を使わないで、いかに意志伝達するかで真価が問われると思います。その考え方で作品を見ると、原始時代の洞窟の壁画からコンテンポラリー・アートまで、何かを感じ取る事が出来ます。食べて寝るだけの生き方では、絶対に産まれてこない、人間性の豊かさですね。有名な、アルタミラ洞窟の牛の絵にも、獲物に対する畏敬の念や、当時の原始的な生活が偲ばれます。江戸時代の北斎漫画でも、当時の粋で滑稽な大衆の生き様が伝わって来ます。0060746d.jpg