最近、私が寝る前に聴く音楽はThe Whoの“Tommy”です。
アコースティックな響きが心地よく、CD1枚あたりの収録時間も長いからです。

ところでThe Whoは、殆どの楽曲をギタリストのピート・タウンゼンドがソングライティングしています。
“Tommy”もまたしかりです。
しかし、こと“Tommy”に関しては、ボーカルのロジャー・ダルトリーのイメージが、楽曲を凌駕して、結果的にロジャーのアルバムになっていると思うのです。
このアルバムは、いわゆるロック・オペラなのですが、ロジャーは主人公の“Tommy”に、なり切って歌っています。
“Tommy”は後に映画化されましたが、その主演もロジャーです。
先日、ソロ・アーティストとしてロジャーが来日しましたが、それも“Tommy”の再演でした。
歌はソングライターが書きますが、ボーカリストが元の歌のエネルギーを凌駕して歌うことは、時々みられる現象です。

ピートの曲を一番上手に、表現出来るボーカリストは、ロジャーだと思います。
ピートもボーカルを取り、ソロアーティストとしても、一定の成功も得ました。
ピートの声は繊細で鼻にかかった感じですが、典型的なロック調な曲で、シャウトが必要な場合は、ピートだと物足りなさを感じてしまいます。

天才的なドラマー、キース・ムーンが夭折し、技巧派のベーシスト、
ジョン・エントウィッスルも他界した今、ピートとロジャーの2人と、サポートのミュージシャンで、The Whoは活動を続けています。

そのような状況下で、The Whoのステージを観ると、ピートとロジャー、2人でやっとシンガーソングライターとして成立する関係なのだと納得してしまいます。
ロジャーはピートの曲の“声”なのです。

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