Ram

個人的に日曜日の朝に聴きたくなるアルバムの1枚が、ポール・マッカートニーの“Ram”です。
このアルバムは発表当時、批評家達から酷評されましたが、現在では再評価されています。

私が10代の頃にこのアルバムを初めて聴いた時も、実は好きになれませんでした。
それは、このアルバムのジャケットの通り、アルバム全体に漂う、どこか牧歌的な空気感が田舎臭く聴こえて嫌だったのです。
そして曲によっては、ポールのボーカルが力み過ぎのように感じたからです。
あとは、殆ど手作りとも言えるようなジャケットもアート好きな私は許せないと思っていました。

しかし、最近は私は“Ram”は名盤だと思っています。
ポールのアルバムを全て所有している私としては、このアルバムが、いかにポールが渾身の力を込めた力作であることを理解しています。
たまにポールは雑にレコーディングしたアルバムや、天才ゆえの迷いを見せるアルバムがあるからです。

特に聴き所は、シングルでリリースされたメドレー調の“アンクル・アルバート〜ハルセイ提督”だと思います。
ロックをアート作品としてレコーディングしたらどうなるかというお手本のような曲です。
この曲は全米1位となりグラミー賞で最優秀編曲賞、最優秀歌唱賞を獲得しています。
またアルバムタイトルの、“ Ram On”も小品ながら、美しい曲に仕上がっています。 

“Ram”はアルバムの全編に奥さんのリンダさんのコーラスを入れることにより、ビートルズの楽曲との差別化を計っています。
また、ニューヨーク録音も敢行し、ニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラともレコーディングし、そんな所もビートルズの楽曲との差別化を計っています。
ビートルズのレコーディングと言えば、ロンドンのアビーロード・スタジオですからね。
ニューヨークと言えば、奥さんのリンダさんの故郷です。
このアルバムはリンダさんとの連名のアルバムになっていますが、そんな意味合いが込められているのかも知れません。

今は、私はこのアルバムの牧歌的な雰囲気が、日曜日の朝にはピッタリだと思っています。
ジャケットのアート・ワークも当時の時代性が反映されていて、なかなか良いと思います。
少し力み過ぎなポールのボーカルも今となっては、もう今のポールには歌うのは苦しそうな気がします。
また、奥さんのリンダさんも1998年に他界しているので、リンダさんのコーラスも、今となっては貴重
だと思います。

因みに、“Ram On”(ラム・オン)は、ビートルズが下積み時代に一時、ポール・ラモーンという芸名を付けていたことに由来します。
ラモーンと言うと…。
そうです、ラモーンズのバンド名のきっかけとなっているのです。

Ram
Paul Mccartney
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2012-05-22