One for the Road

最近は取り憑かれたようにキンクスを聴いている私です。
中でも、ライブ盤の"One for the Road"は、私のお気に入りです。
評価筋では、それほど評価が高いアルバムではないのですがね。

レイ (ボーカル、リズム・ギター)とデイヴ (リード・ギター)の、デイヴィス兄弟の演奏だけでなく、ドラムのミック・エイヴォリーのドラムも聴きものとなっています。

ミック・エイヴォリーは、地味ながらも、兄弟仲が悪いデイヴィス兄弟と20年もの長きに渡って活動を共にしていたことは、評価出来るかと思います。
キンクスのメンバーで、デイヴィス兄弟以外で、最もバンドの在籍期間メンバーは、ミック・エイヴォリーだけです。

ミック・エイヴォリーは、初期のキンクスのレコーディングでは、スタジオ・ミュージシャンが叩くことが判明し、とぼとぼと、スタジオを去ることを繰り返していました。
途中から、ほぼ全てのキンクスのアルバムでドラムを叩くことになったので、結果的に、この気難しい兄弟と付き合っていたことは正解だったと思います。

前述の通りミック・エイヴォリーは、初期はレコーディングから、外されることも多々あった位なので、とても超絶的な名プレイヤーと言えないでしょう。
その音色は、リンゴ・スターやチャーリー・ワッツのような'60年代のバンドにありがちな音色のドラムと言えば想像が付くでしょう。
良く言えば『味わいがあるドラム』です。

特に、その『味わい』はロックで早い曲より、牧歌的でのんびりとした曲で発揮されていると思います。
しかし、"One for the Road"では、ギターのデイヴ・デイヴィスがイントロで早弾きを披露して曲に入るので、ミック・エイヴォリーも必死に食らいついてドラムを叩く構図がレコーディングされています。

出だしで、一瞬、ミック・エイヴォリーのドラムがモタつくも、すぐに立て直す様子がレコーディングされている所も、ライブ盤の醍醐味かと思います。
その様子が、どこかスリルを感じてしまいます。

このアルバムがリリースされた数年後に、ミック・エイヴォリーはバンドからクビを言い渡されますが、その後キンクスが失速してしまいますので、何かバンドを上手く取回す技術を持っていたことは想像に硬くないです。

そう言えば、ミック・エイヴォリーはチャーリー・ワッツがローリング・ストーンズに加入前の一時期、ドラムを叩いていたことがありますが、その後ストーンズから誘いがなかったのは、彼らから気に入られなかったからでしょう。

でも、キンクスから20年もの長きに渡り、リズム・セクションを任されていたことは、結果的に良かったのかと思います。

One for the Road
Kinks
Universal UK
2010-07-27