MAXIMUM AS & BS

9日に、驚くべき物がAmazonから届きました。
それは、The Whoの"MAXIMUM AS & BS"です。

なぜ驚く物かと申しますと、この"MAXIMUM AS & BS"は、2017年11月13日に注文した物だったからです。
Amazonで注文してから約1年1ヶ月もかかった物は、初めてですし、最長記録です。

発注してから、3ヶ月に1回の頻度で、『発送が遅れています』とメールが届いていました。
でも、そのメールの受信が日常になってしまい、そのうち気にも留めなくなり、注文したことも忘れかけてしまいました。
なので、12月8日に、『発送しました』というAmazonの通知を見た時は、目を疑いました。

もちろん、ダウンロードしたり、ストリーミングで保存したりという方法もありました。
しかしながら、The Whoの大ファンで熱心なコレクターの私は、公開されていた全曲を全て知っている曲だったので、そのような手段は取らず、CDで"アイテム"として入手したかったのです。

届きますと、豪華なブックレットとCDのDisc 5枚の、良いボックスセットだったので、結果的に良かったと思っています。

この"MAXIMUM AS & BS"は、シングルやEPのA面及びB面の全曲をリリース順に収録したボックスセットです。
リリースした時期までも頭に入っている大ファンの私ですが、改めて聴きますと、シングル用の曲だけあって、クォリティーが高いと感じました。

まずは、ロック・バンドのシングルなので、アップテンポからミディアムの曲が続き、キース・ムーンのドラムとジョン・エントウィッスルのベースのグルーヴが素晴らしいと感じられました。

そして、ソングライターのピート・タウンゼントが、キャリアを積む毎に、一介のロックのソングライターから『天才音楽家』への変貌を遂げる姿も、手に取るように分かりました。
ピート・タウンゼントだけでなく、Disc 3までにキース・ムーンやジョン・エントウィッスルはカリスマ的なプレイヤーになり、ボーカルのロジャー・ダルトリーもカリスマ的なボーカリストに成長しました。

しかし、Disc 4の途中でドラムのキース・ムーンは故人となり、Disc 5の途中でベースのジョン・エントウィッスルも故人となり、それぞれのパートのグルーヴが失われて行きます。
Disc 5は、ファンとしては辛いものになるかと思いきや、残されたピートが"天才音楽家"振りも成熟さを増し、ロジャーのボーカルも黒人ブルース・シンガーのような境地に達するようになりました。

"MAXIMUM AS & BS"は、ただ単に、ベテランのロック・バンドのシングルを羅列した音源ではないことを気付かされました。
"MAXIMUM AS & BS"は、ロック・バンドの生き様まで体現したシングルのボックスセットになったと思います。
ロック・バンドにとって何よりも手痛いのは、バンドのメンバーが命を落として失うことです。
それを2度も乗り越えて、新たな音楽的境地を築くことが、いかに大変であるかが思い知らされました。

バンドのメンバーが命を落とした場合、解散すれば良いのですが、彼らはその道は選びませんでした。
それはも、ビジネス的な意味合いだけでなく、キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも、自身が命を落としたとしても、The Whoの解散を望んでいないことを、ピートもロジャーも痛い程に分かっていたからでしょう。
キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも自身の死が、The Who解散の一因になったとしましたら、あの世で怒りを爆発していることでしょう。

The Whoは、現在ではロック・レジェンドと言われますが、"MAXIMUM AS & BS"を聴いてから、彼らを軽々しくロック・レジェンドと言えなくなってしまいました。
ロック・レジェンドと言われるまでに、ピートとロジャーは想像を絶する悲しみと苦しみを味わっていたからです。

私も、今後は軽々しく"ロック・レジェンド"というマスコミが作り出した言葉は使わないように思った次第です。

MAXIMUM AS & BS [5CD]
THE WHO
MCA RECORDS
2017-10-27