★絵描きの日記

加茂谷正俊のブログです。 絵画を中心に美術やっています。 公募展出展、グループ展や個展などもします。 2010年、2014年、2018年、2022年、富山国際現代美術展に参加。

ピート・タウンゼント

The Whoのピート・タウンゼントのソングライティング能力に驚かされた2曲

Kids Are Alright

The Whoマニアを自称する私ですが、そんな私でもピート・タウンゼントのソングライティング能力に驚いた2曲があります。
その2曲が、"A Quick One (While He's Away)"と、"Baba O'Riley"です。
もちろん、数多くのヒット・シングルの名曲も良いのですが、 "A Quick One (While He's Away)"と"Baba O'Riley"は、シングルとして売るには全く似合わない、完全なるアーティスティックな曲だからです。

"A Quick One (While He's Away)"は、ピートがインタビューで、セカンド・アルバムで3曲分の空きが出来、プロデューサー兼マネージャーのキット・ランバートから3曲繋げた曲を書くように言われて書いたこと答えています。
無理難題ですが、ちゃんと出来てしまう所がピートの凄い所ですね。
これが、The Whoのロック・オペラ路線の源流となって行きます。

レコーディングされ、リリースされたのが、1966年である所が凄いです。
当時はビートルズも、このような曲を発表してない、唯一無二のピートの曲だと思います。
The Whoでは、ありがちなパターンですが、スタジオ盤よりライブ・バージョンの方が臨場感があって良いです。
特に、ロックンロール・サーカスのライブ・バージョンは有名です。





"Baba O'Riley"に関してましては、ピートの超人的な天才振りが発揮され、常人には、どうやってソングライティングされたのか、分かりません。
冒頭のシンセサイザーのループからして、もはや前衛的です。
ピートが信仰しているインドの導師、ミハー・ババからヒントを得ていると言いますが、なぜこのような曲になったのか、皆目見当がつきません。
"Baba O'Riley"も、1971年にリリースされていて、当時は画期的だと思います。

"Baba O'Riley"はスタジオ・バージョンで完成度は高いですが、ライブでもハイライトの曲と言えます。
後年、海外ドラマCS Iのテーマ曲になったり、ロンドン・オリンピックの閉幕式でパフォーマンスされたり、すっかりThe Whoの代表曲になってしまいました。
私もライブで聴きましたが、とってもモダンなロック・ナンバーでした。

ピートがソングライティングした曲は、きちんとThe Whoのライブで演奏可能な曲である事も特筆すべきです。
逆説的に言いますと、ライブでスタジオ盤以上のパフォーマンスが可能な The Whoの演奏技術が素晴らしいです。
"A Quick One (While He's Away)"と、"Baba O'Riley"をカヴァー出来るバンドなんて、そうそう居ませんからね。






"Who"は2019年という時代を反映したロックアルバムだと思います

The Who

12月7日、The Whoのニューアルバム、"Who"がリリースされました。
The Whoの新しいアルバムがレコーディングされるのかどうか、ボーカリストのロジャー・ダルトリーであっても予想が付きません。
ソングライターでギタリストのピート・タウンゼントが、新曲を書かないと、事が進まないからです。

2006年にリリースされた前アルバム、"Endless Wire"から13年間の間にロジャーは、70歳を過ぎてから、どんどんアーティスト性を高めました。
ウィルコ・ジョンソンとコラボレーションした2014年の"Going Back Home"はUK3位という記録を収め、2018年にリリースしたソロアルバム、"As Long as I Have You"はUK8位に達しました。
そのようなロジャーの活動を見て、ピートは少なからず触発は受けているかと思われます。

"Who"ですが、バンドの相棒のロジャーであっても、予想が付かないピートの創作活動の中で突如、The Whoのアルバム用に曲を大量に書いて来たことでレコーディングが進みました
事前にアルバムのリリース前に、既に冒頭の3曲がリリース済みだったので、私の中にすんなりと入って来ました。

前アルバム、"Endless Wire"にと比べて大きく違いますのは、ドラムのザック・スターキーがドラムを叩いている曲が多いことです。
("Endless Wire"の頃は、ザックはオアシスの活動にかかり切りで、1曲しか参加せず)
なので、いつものツアーのメンバーであるザック・スターキーと、ベースのピノ・パラディーノのグルーヴを堪能出来ることです。
これまでライブ盤で聴いていたグルーヴが、スタジオ盤でクリアに聴くことが出来ます。

そして、アルバムの特徴としましては、ソングライター・ギタリストのピート・タウンゼントの曲が粒ぞろいであることです。
ピートが得意とするロック・オペラな曲は、1曲もなく、どの曲もシャッフルで再生したとしても『完成型』であることです。
それは、ストリーミング配信を念頭においたことかと思われます。

近年アーティスティックな活動をするロジャーのボーカルは、まるで黒人ブルース・シンガーがような渋い声を出したり、曲によっては年齢を感じさせない高いキーで歌っていたりと、しなやかなボーカルを披露しています。

総括致しますと、"Who"は2019年という時代を反映したロックアルバムだと思います。
決して、過去の”懐かしい芸風”を再現せず、現代のThe Whoのツアー・メンバーのサウンドを披露し、時代を反映したピートが書いたLylicsも刺激的です。
そして、当世風の凝ったサウンド・メイキングも特筆すべきことだと思います。




ピート・タウンゼントの詩的表現

Tommy

The Whoのソングライター、ピート・タウンゼントが書くLylicsは、時として解釈が難解なこともあります。
しかしながら、印象的なフレーズが多く、時として人生感を一変してしまったこともあります。

私が好きなフレーズを、以下に列挙します。
"I Can't Explain" 『説明出来ない』
"My Generation"『歳を取る前に死にたい』
"See Me, Feel Me"『私を見て、感じて、触って、癒して』
"Won't Get Fooled Again" 『新しいボスと会え!前のボスと同じだ!』

改めて、列挙しますと感じますのは、繊細さと自尊心と反抗心に満ちたLylicsに感じられます。
恐らくは、ピートのパーソナリティーから湧き出る言葉なのかと思いますが、『歳を取る前に死にたい』と『私を見て、感じて、触って、癒して』というフレーズを連続して読みますと、若者ならではの自尊心を体現した言葉であることを感じてしまいます。

さらに、The Whoはピートが書いたLylicsを、ボーカリストのロジャー・ダルトリーが歌うことで完結します。
ロジャーの、ややハスキーな声と黄金のカーリーヘアのルックスから化学反応のように融合し、一気に神々しいロック・シンガーの曲に昇華します。

ピートの難解なLylicsを独自に解釈して歌うロジャーは、頭が良くないと無理だと思います。
何だかんだ言って、The Whoのピートとロジャーは、切っても切れない表現者のチームなのだと思います。


Tommy-Remastered
Who
Geffen Records
2013-11-11

ソングライター、ピート・タウンゼントの率直な主張

The Who

The Who の新曲、"All This Music Must Fade" の配信が始まりました。
この"All This Music Must Fade"の魅力は、ロジャーのボーカルに対するピートのコーラスの掛け合いかと思います。
そして炸裂するピートのギターも魅力で、これぞThe Whoの曲といった感想です。

Lylicsは盗作されたとばかりに、騒動を起こすアーティストへの皮肉となっています。
確かに、1オクターブ当り12音階しかない制約の中で、作曲家達は日々、新曲に取り組んでいます。
作曲家が知らないうちに、他の曲と似た曲が出来てしまっても、やむを得ないのかも知れません。

希代な才能を持つソングライター、ピート・タウンゼントの率直な主張なのかと思います。

ここ数年はヒップホップが全盛の時代ですが、ヒップホップの場合は、"似ている"疑惑は避けられるかも知れません。
もっとも、ヒップホップもバックで鳴っているブレイクビーツが、誰かと似てしまう危険性はありますがね。



WHO
The Who
Interscope Records
2019-12-06

しっかりと聴きました!

The Who

The Whoの新曲、"Ball And Chain"が、早くもSpotifyで配信されていましたので、本格的オーディオ機器で再生してみました。
本格的オーディオ機器とは、『しっかりとしたアンプで、大きめのスピーカーで再生する』ことを指します。

まずは、スマートフォンをアンプとベアリングして、いざSpotifyで再生です!
既に配信が始まる前に、YouTubeで"Ball And Chain"を聴いていましたが、どうなることか…。

本格的なオーディオ機器で再生してみましたところ、パソコンやスマートフォンでは目立たなかった、ピノ・パラディーノのベースが、美しいフレーズを弾いていることに気付きました。
ピノ・パラディーノのプレイは、必聴です。

順序が逆になってしまいましたが、"Ball And Chain"の感想は、イントロ部分から既にソングライターのピート・タウンゼント節が炸裂です。
そして、ボーカルのロジャー・ダルトリーは円熟味を増し、黒人ブルース・シンガーのように歌い上げています。

加えて、ザック・スターキーのドラムは、期待通りの力強いドラミングを披露していますが、ライブと勝手が違う新曲のため、キース・ムーンの"お手本"がなく、そのリズムのノリは後期のオアシスを連想するものとなっています。

オアシスと言えば、プロデューサーのデイブ・サーディーは、後期のオアシスの2枚のアルバムをプロデュースし、ザックとは旧知の間柄です。
ザックが、オアシス時代のノリで叩いてもも不思議ではありません。

11月22日にリリースされるアルバム"Who"が楽しみです。
個人的には私が尊敬する英国のアーティスト、ピーター・ブレイクのアートワークにも惹かれています。
これは私、ヴァイナイルは必ず購入することでしょう!



WHO
The Who
Interscope Records
2019-11-22

The Whoの音楽は、若さの象徴だと思います

My Generation Super Deluxe box set

11日は、私の人生の中で最も影響を受けたバンド、The Whoを1日中聴いていました。
車の中であったり、自宅であったり、私が滞在している全ての場所で聴きました。

その中でも、最も気に入ったのは、最初期の音源です。
The Whoが最初にヒットさせたシングル、"I Can't Explain"のリリース当時(1965年1月15日)は、ソングライター・ギタリストのピート・タウンゼント(1945年3月19日生)は、19歳でした。
そして、バンドの最年少メンバーであったキース・ムーンにいたっては、18歳(1946年8月23日生)でした。

ピートは20歳になる直前で、キースは半年以上経って19歳になるという計算になります。
ちなみに、ボーカリストのロジャー・ダルトリー(1944年3月1日生)は20歳。
ベーシストのジョン・エントウィッスル(1944年10月9日生)で20歳です。
いかに、早熟なバンドであったのか、伺い知れます。


彼らのファースト・アルバム、"My Generation"がリリースされた日は、同年の12月3日なので、11ヶ月も満たしていないことになります。
4人の若者達が演奏した、そのサウンドは若々しく、ピートの曲も普遍的な若者特有の感情をソングライティングしています。

存命しているピートもロジャーも、こんなに若い頃にレコーディングされた音源が、歴史的な名盤になるとは、思っていなかったでしょう。

私もThe Whoの曲に出会ったのが、19歳だったので、改めて聴き直しますと、当時のメンタリティーが、ふつふつと沸き上がって来るので不思議です。

The Whoの音楽は、若さの象徴だと思います。

MY GENERATION / LTD.ED
WHO
POLYD
2016-11-18

The Whoを世界的な大スターに変えたウッドストック・フェスティバル

Woodstock

1969年という年は、The Whoにとって重要な1年となりました。

まず、その第一弾は、1969年3月7日にリリースされたシングル、"Pinball Wizard"は、UK4位を記録しました。
しかし、それはまだ序章に過ぎませんでした。

"Pinball Wizard"を収録したロック・オペラのアルバム、"Tommy"は3月17日にリリースされ、UK2位とUS4位という、これまでのThe Whoのキャリアで最もヒットしたアルバムとなりました。
セールスだけでなく、評論家筋から大絶賛を受けました。

そして、同年8月に開催されたウッドストック・フェスティバルに出演しました。
The Whoは2日目の8月16日の出演でしたが、予定が大幅に遅れ、8月17日の未明になりました。
ウッドストックがあるニューヨーク州と日本は、時差が13時間なので、日本時間では昭和44年8月17日の昼過ぎから夕方であるかと思われます。

会場で、The Whoはロック・オペラ"Tommy"を演奏し、最後はギタリスト&ソングライターのピート・タウンゼントがギターをステージ床に叩き付け、フィードバック・ノイズの嵐の中で演奏を終えました。

ライブが終えたと同時に、偶然にも朝日が登り、結果的に感動的なステージとなりました。
そんな、ウッドストック・フェスティバルのThe Whoのライブは、伝説となっています。
40万人が押し寄せた、ウッドストック・フェスティバルで、The Whoは、一躍スターとなりました。

それだけでは収まらず、映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』が1970年3月に公開され、世界中で上映。
そのパフォーマンスで、The Whoは世界的な大スターとなりました。

The Whoのメンバーは、巨万の富を得ましたが、最も富みを得たであろうソングライターのピート・タウンゼントは、プレッシャーを感じてしまったようです。

無理もありません。
それまで、英国や欧州でシングルを中心にヒットを飛ばしていたThe Whoが、その存在すら知らない、世界中の田舎町の映画館でも、突如としてスターになったのですからね。

インターネットがない時代で、わずか1年で世界的大スターになってしまいましたら、その困惑も理解出来そうです。

下の動画は、映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』のものですが、一部情報では、モニターの機能が駄目になり、自身の演奏も把握出来なかったと伝えられています。
逆に、そのような環境でも名演を出来たThe Whoの演奏力に感嘆してしまいます。



ディレクターズカット ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間 [DVD]
ドキュメンタリー映画
ワーナー・ホーム・ビデオ
2011-07-20

ロック・バンドの生き様まで体現したシングルのボックスセット!

MAXIMUM AS & BS

9日に、驚くべき物がAmazonから届きました。
それは、The Whoの"MAXIMUM AS & BS"です。

なぜ驚く物かと申しますと、この"MAXIMUM AS & BS"は、2017年11月13日に注文した物だったからです。
Amazonで注文してから約1年1ヶ月もかかった物は、初めてですし、最長記録です。

発注してから、3ヶ月に1回の頻度で、『発送が遅れています』とメールが届いていました。
でも、そのメールの受信が日常になってしまい、そのうち気にも留めなくなり、注文したことも忘れかけてしまいました。
なので、12月8日に、『発送しました』というAmazonの通知を見た時は、目を疑いました。

もちろん、ダウンロードしたり、ストリーミングで保存したりという方法もありました。
しかしながら、The Whoの大ファンで熱心なコレクターの私は、公開されていた全曲を全て知っている曲だったので、そのような手段は取らず、CDで"アイテム"として入手したかったのです。

届きますと、豪華なブックレットとCDのDisc 5枚の、良いボックスセットだったので、結果的に良かったと思っています。

この"MAXIMUM AS & BS"は、シングルやEPのA面及びB面の全曲をリリース順に収録したボックスセットです。
リリースした時期までも頭に入っている大ファンの私ですが、改めて聴きますと、シングル用の曲だけあって、クォリティーが高いと感じました。

まずは、ロック・バンドのシングルなので、アップテンポからミディアムの曲が続き、キース・ムーンのドラムとジョン・エントウィッスルのベースのグルーヴが素晴らしいと感じられました。

そして、ソングライターのピート・タウンゼントが、キャリアを積む毎に、一介のロックのソングライターから『天才音楽家』への変貌を遂げる姿も、手に取るように分かりました。
ピート・タウンゼントだけでなく、Disc 3までにキース・ムーンやジョン・エントウィッスルはカリスマ的なプレイヤーになり、ボーカルのロジャー・ダルトリーもカリスマ的なボーカリストに成長しました。

しかし、Disc 4の途中でドラムのキース・ムーンは故人となり、Disc 5の途中でベースのジョン・エントウィッスルも故人となり、それぞれのパートのグルーヴが失われて行きます。
Disc 5は、ファンとしては辛いものになるかと思いきや、残されたピートが"天才音楽家"振りも成熟さを増し、ロジャーのボーカルも黒人ブルース・シンガーのような境地に達するようになりました。

"MAXIMUM AS & BS"は、ただ単に、ベテランのロック・バンドのシングルを羅列した音源ではないことを気付かされました。
"MAXIMUM AS & BS"は、ロック・バンドの生き様まで体現したシングルのボックスセットになったと思います。
ロック・バンドにとって何よりも手痛いのは、バンドのメンバーが命を落として失うことです。
それを2度も乗り越えて、新たな音楽的境地を築くことが、いかに大変であるかが思い知らされました。

バンドのメンバーが命を落とした場合、解散すれば良いのですが、彼らはその道は選びませんでした。
それはも、ビジネス的な意味合いだけでなく、キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも、自身が命を落としたとしても、The Whoの解散を望んでいないことを、ピートもロジャーも痛い程に分かっていたからでしょう。
キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも自身の死が、The Who解散の一因になったとしましたら、あの世で怒りを爆発していることでしょう。

The Whoは、現在ではロック・レジェンドと言われますが、"MAXIMUM AS & BS"を聴いてから、彼らを軽々しくロック・レジェンドと言えなくなってしまいました。
ロック・レジェンドと言われるまでに、ピートとロジャーは想像を絶する悲しみと苦しみを味わっていたからです。

私も、今後は軽々しく"ロック・レジェンド"というマスコミが作り出した言葉は使わないように思った次第です。

MAXIMUM AS & BS [5CD]
THE WHO
MCA RECORDS
2017-10-27

ライバルに負けずに爆音! The Who"ライヴ・アット・フィルモア・イースト"の感想

Live at The Fillmore East

リリースしてから、少々遅れましたが、The Whoの"Live at The Fillmore East"を聴いた感想について綴りました。
もちろん、現品はAmazonで予約して、当日に入手して聴きましたよ。
ファンとして、それは当然の行為です。

しかし、実はこの音源、かなり前に私は聴いていたのです。
もちろん、ブートッレッグですが…。

Live at The Fillmore East

上の写真は、そのブートレッグのジャケットです。
昔、私はThe Whoのブートレッグを買い漁っていたのですが、音質の悪さと、何よりもバンドに対しての申し訳なさで、ある時期で、購入することを止めました。

まぁ、前置きはそこまでにしておきましょう。
今回の"Live at The Fillmore East"は、当然ながらブートレッグと内容は一緒ですが、何よりも、その音質の高さに尽きます。
試しに聴き比べましたが、ブートレッグは聴くに耐えない音質でした。

今回のテープの修復、リミックスとリマスターは、デジタルの時代だからこそ、可能になったことだと思います。

The Whoの演奏は、1968年という時代を意識した工夫が、なされています。
1964年にバンドが登場した時代から、爆音演奏が自慢であったThe Whoです。
しかしながら、1968年にはクリームやジェフ・ベック・グループ、ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスなど、ハードな演奏とインプロビゼーションを取り入れたハード・ロックの時代に突入して行きました。

それを意識してか、エディ・コクランのハードなカヴァーを、"Summertime Blues"、"My Way"、"C’mon Everybody"と3曲も取り入れています。
そして、彼らの代表作である "My Generation"は、インプロビゼーションを取り入れた長尺演奏になっています。

これは、私個人の憶測ですが、強烈なライバル達の出現で、この時代のThe Whoは神経を擦り減らしていたことでしょう。
ハードロックの時代になった1968年には、連日の爆音演奏に疲れ切ってしまったヤードバーズが、解散してしまったという実例もあります。

特にThe Whoとジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスは、"トラック・レコード"という同じレーベルに所属していて、対バンを組まされることが多かったのです。

実際に、The Whoのギタリストでソングライターのピート・タウンゼントは、インタビューで『ジミ・ヘンドリクスみたいな天才と、共演させられるなんて勘弁して欲しかった』と語っています。

爆音ライブが自慢だったThe Whoが、より爆音な演奏をする後進のバンドに追い上げられる時代に、"Live at The Fillmore East"では、負けずに食らえ付いている状況を、ひしひしと感じました。

LIVE AT THE FILLMORE
WHO
POLYD
2018-04-27

四重人格は音のタペストリー

Quadrophenia










9日は、The Who (ザ・フー)の“ Quadrophenia (邦題;四重人格)”を久し振りに聴きました。
私のBlogを、いつも読む方は、『おやっ?』と思うことでしょう。
普段、無類のThe WhoのマニアだとBlogに書いているのに、『The Whoのアルバムを久し振りに聴くとは、これいかに?』と思うことでしょう。
なぜなら、“Quadrophenia”は、The Whoの編集盤を除いたオリジナルアルバムで、唯一のCD2枚組の超大作だから、そんなに気軽に通して聴けないのです。

The Whoの超大作は2作あって、ロックオペラ“Tommy”と、この“Quadrophenia”です。
しかし、“Tommy”はアナログ時代はレコード2枚組でしたが、CDの時代になり、1枚に収まったのです。
ですので、“Quadrophenia”は唯一のCD2枚組になってしまい、聴いている途中でCDを入れ替えなければなりません。
そして、iPodで聴いてる時でさえも、途中でカチッとスイッチを入れ直さないといけないのです。
そういった聴く手間もかかる上、私の場合、'60年代の初期のThe Whoの曲が好きな傾向なので、“Quadrophenia”は、ついつい避けて通ってしまいます。

久し振りに通して聴いてみると、なかなか良くて、何でしばらく聴いてなかったのかと思う位でした。
あんなに、通して聴くと大変だと思っていたのが、嘘のように、あっと言う間に時間が過ぎました。
1973年に発表された作品なのに、大胆にシンセサイザーが導入されたサウンド…。
そして、何度もオーバーダビングされたであろう複雑な音の構成に、まるで音のタペストリーのように感じられました。
前述のロックオペラ“Tommy”は、ライブで演奏することを前提にレコーディングされたため、それ程複雑なオーバーダビングがなされていないのですが、この“Quadrophenia”は、当時ライブで全編再現が不可能だったというのも頷ける位に複雑なオーバーダビングが、なされています。

CDJ
















現在、The Who は“ Quadrophenia”を全編再現させるツアーの真っ最中です。
YouTubeで観ると、21世紀の技術と、ゲストミュージシャンの動員による人海戦術により、ようやく再現が可能になった印象です。
1996年にも、The Who は“ Quadrophenia”を全編再現させるツアーを敢行していますが、この時はギターのピート・タウンゼントが、聴覚障害のために明らかに及び腰でしたが、今回はガッツリ本気さを感じさせられます。
何よりも、1996年のツアーに比べ、よりソリッドでロックな演奏で、かつテクノロジーの進歩を感じさせるものになっているのです。
これは、ライブ盤CDやBlu-ray 作品として発表して欲しいクオリティーです。
あっ!
もちろん、是非とも日本にも来てもらいたいですね。
でも、滅多に日本に来ないThe Whoのことなので、どうなるか分かりませんが…。

Quadrophenia
Quadrophenia [CD]
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