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デヴィッド・ボウイ ( David Bowie ) の話題の新作、“The Next Day”を聴き込みました。
全体にロックな印象が強い今作ですが、iTunesのダウンロード数が世界中で凄いことになっているらしいです。

私はボウイのアルバムをほぼ全て揃えている、大のボウイのファンですが、そんな私から言わせると、“The Next Day”は、ボウイの人生の総決算という印象を受けました。
『いかに二枚目な男でも66歳にもなれば、人生の総決算のようなアルバムを作るのかなぁ?』という感想です。
なぜならば、音の端々に、今までのボウイの音楽のキャリアがミックスされた印象を持ったからです。
そして、何よりも10年振りのアルバムのリリースのという事実です。
2004年にボウイは、ライブの終了後、入院して心臓のカテーテル手術が行われたという噂を聞いていたので、多分、健康のためにマイペースな生活を送っているものだと思っていました。
そう思っていたら、突如の“The Next Day”のリリースです。
10年振りのリリースのために、若い年代では、これが初めて聴くボウイのアルバムだという現象が、全世界的に起こっているらしいです。

でもボウイは、その長いキャリアで、カメレオンのように、そのサウンドとルックスを変えて来た男です。
だから、『この曲がボウイの代表的な曲調ですよ』とか言えないミュージシャンなのです。

では、デヴィッド・ボウイとは、これまでどんなキャリアを積み重ねて来た方かと言いますと、まさに紆余曲折なのです。
ボウイの音楽活動は、年齢からも分かる通り、'60年代がスタートです。
その頃は、あらゆるバンドを結成しては解散しての繰り返しで、レコード会社と契約しても、『今売れている〜のバンドのような曲とイメージで』といった要求が何度も繰り返してばかりで、その度に曲調やイメージを変えざるを得なかったそうです。
ボウイが、めまぐるしく、曲調やサウンド、ヴィジュアルイメージを変更していったのは、若き日のこの経験が大きいと私は思っています。
また、同時に演劇にも傾倒し、パントマイムなども始めるようになります。
そして、1969年に念願の初ヒット曲、“Space Oddity”が英国のチャート5位にまで上ります。
でも、その後も一発屋で終わる危惧もある中、演劇とロックを融合したグラムロックというジャンルを作り、不朽の名作“ジギー・スターダスト”を1972年にリリースします。
グラムロックとは、今の日本のヴィジュアル系バンドのようにメイクし、髪も染めて金属的なサウンドが多い曲調のロックで、当時はセンセーショナルだったのですが、それは、前述のボウイの演劇の素養が生かされたものなのです。
“ジギー・スターダスト”でいきなりグラムロックのスターになったボウイですが、その仮面を脱ぎ捨て、どんどん違うサウンドやヴィジュアルイメージに変化していきます。

'70年代後半は、東西冷戦下のベルリンに隠り、エレクトリックサウンドを芸術の域まで昇華させた名盤、“Low”などを制作していきます。
しかし、'80年代には一転してコマーシャル路線に変更し、“Let's Dance”で一躍MTV時代のスターとして活躍していきます。
'70年代は、ロック界のカルトヒーローだったのですが、'80年代には、すっかり大衆的なスターになったのです。

'90年代は、'80年代の コマーシャル路線の反動からか、アーティスティックなアルバムをコンスタントのリリースして行くことになります。
そして、10年のブランクを経て、“The Next Day”がリリースされたのです。
説明が長くなってすみません。
でも、“The Next Day”は、そんな多様なボウイの音楽キャリアをミックスされたような作品に、私は感じたのです。

The Next Day
The Next Day [CD]